るうらのペン

どうにかレベルアップしようと試行錯誤するブログ

5804 図書館情報資源特論レポート【近大通信教育部 司書資格】

書き方がよくわからず困っていたところ、先輩方の公開されているレポートを参考にしてスムーズに合格することができたので、私も自分のレポートを公開しようと思います。※レポート丸写しして再提出になる例が増えているようです。自己責任で参考としての利用をお願いします。

レポート作成

【設題】灰色文献とはなにか、灰色文献の定義や意義、特性について記述してください。また、灰色文献と言われる具体的な資料名を挙げて、その資料の特徴についても説明してください。

【解答】
1、灰色文献とは
 図書館の資料収集において、流通経路が不明確で通常の出版ルートにのらず、入手が難しい資料の総称であり、国家機密、公開不許可等の規制を受けている情報「黒」に対して、誰にでも入手方法が明らかにされていて入手が容易である「白」と対比され、両者の中間に位置するところから「灰色」と呼ばれている。
 灰色文献という言葉が最初に使われたのは1978年12月にイギリスのヨークで開催された灰色文献に関するセミナーが最初であるとされている。それ以前はアクセシビリティの困難性の側面から非市販資料、入手困難な資料、一過性資料などと呼ばれていた。
 
2、灰色文献の定義と意義、その特性
 灰色文献は民間出版物にも官公庁出版物にも存在し、特に公的機関が発表する資料は極めて今日的な意味を持つ重要度の高いものと認識されている。灰色文献の種類には次のようなものがある。国家機関が立法・行政、または広報のために作成・発行された政府刊行物、地方自治体が作成した資料、民間のシンクタンクなどの発表する調査研究報告書、学位(博士号)を取得するために書かれた学位論文、学会などの会議での発表論文とディスカッションを中心にその会議の正式な記録をまとめた会議録など、一部、一般的には入手が困難で内容に速報性があるのが特性と考えられる。このような灰色文献を図書館が積極的に収集し、市民に提供することは情報公開の原則に照らした時、その意義は大きなものとなる。
 昨今、世の中がデジタル・ネットワーク時代に入ったことで、灰色文献は紙や電子フォーマットで政府、大学、ビジネス、産業のあらゆるレベルにおいて生み出されるものとなり、商業出版によりコントロールされているものではなく出版を本業としない組織によってコントロールされている。これが現在、最も一般的な灰色文献の定義とされている。
 灰色文献は商業ベースに乗らないなどの理由で入手困難な資料にいかにアクセスするかがポイントとされていたが、インターネットの普及によりweb上に電子化された資料の全文情報が公開されることが増えてきたことで、従来入手困難であった資料でも容易にアクセスが可能となった。
 しかし、アクセシビリティの問題が解消されたわけではない。なぜなら、これらは永続的にアクセスできるといった保証もなく、発信側の都合に委ねられることになるからである。情報源のアーカイブの問題や電子媒体の保存の問題など、課題も多く存在する。また、商業刊行物のように定期的な新刊情報が発信されるといった機会も少なく、その存在さえも知らなければアクセスできないといったことから灰色文献のアクセシビリティの問題として今後も継続する課題である。
 以下、具体的な灰色文献を取り上げ、その特徴について述べていく。

3、『大阪府議会における万博誘致活動の指針』
 この資料は大阪府議会で行われた2025年日本万国博覧会誘致委員会による活動指針を表す会議資料であり、2018年11月23日に晴れて大阪が万国博覧会の開催地として決定したところから遡るものである。灰色文献の公開日の度合いや入手の容易さから同じ灰色でも、薄い灰色、濃い灰色に分けられるが、この資料はオフィシャルサイトの開設やSNSでの報告、資料へのURLのリンクなどがあることから灰色文献の中でも極めて薄い灰色の資料だといえる。
 実のところ、万国博覧会の開催国を決める為にパリで行われた博覧会国際事務局(BIE)総会での日本が行ったプレゼンテーションの資料を求めたのだが、2018年12月現在、インターネット検索でヒットせず、入手に至らなかった。結果、限りなく濃い灰色に近い資料であると考えられる。
 このようにweb上に公開されているものは薄い灰色に近く、会議やプレゼンテーションの参加者に限定配布されたものは濃い灰色というように違いが生じてくる。しかし、今後オフィシャルHPなどでの掲載やネットワークの特性上、マスメディアによる紙や電子などあらゆる媒体での情報の公開が行われる可能性もあることから、アクセシビリティの面から灰色文献は変化する特性を持っているといえる。

4、おわりに
 これまで「灰色文献」となり市民の多くが容易に入手・利用できなかった情報は、今日その多くがインターネット上で利用できる状況となり、制度的にも灰色文献の実質的範囲はかなり狭まってきた。しかし、その半面、紙・電子が混在する中で数多く生み出され続けているアクセシビリティが抱える課題が存在し、昨今のインターネット時代により、より複雑な状況を創り出したともいえる。これらは灰色文献の定義がまだ充分でないことが要因のひとつだと考えられる。今後も図書館員が灰色文献の持つ課題を理解しながら積極的に収集に取り組んでいくべきである。

文字数 1968文字


参考文献
大阪府議会『大阪府議会における万博誘致活動の指針』(http://www.pref.osaka.lg.jp/hodo/attach/hodo-28078_4.pdf)

池田貴儀『特集:灰色文献「問題提起:灰色文献定義の再考」(情報の科学と技術 2012年62巻2号)』J-STAGE(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jkg/62/2/62_KJ00007905839/_pdf/-char/ja)