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5701 生涯学習概論 レポート【近大通信教育部 司書資格】

書き方がよくわからず困っていたところ、先輩方の公開されているレポートを参考にしてスムーズに合格することができたので、私も自分のレポートを公開しようと思います。※レポート丸写しして再提出になる例が増えているようです。自己責任で参考としての利用をお願いします。

レポート作成イメージ

【設題】
ラングランの生涯教育的思想とリカレント教育の思想の
社会的背景について考えてください。

【解答】

1、ラングランの生涯教育的思想の背景について
 ラングランの生涯教育的思想とは1965年にユネスコ成人教育推進国際委員会において提唱された「生涯教育の理念」のことである。
 「教育は青少年期に集中して行われる学校教育だけでなく、生涯にわたってさまざまな教育機会が提供されなければならない」という考え方であり、人間の生涯という垂直軸の教育機会と、個人及び社会全体という水平軸の教育機会を統合しようとする理念である。
 ラングランの生涯教育的思想は「社会に適応するための生涯教育」という考え方といえる。その発想が生まれる背景には、社会の急激な変化が存在している。
 その頃は、アメリカ合衆国とその当時のソビエト連邦との東西対立・冷戦の中で、宇宙開発も進み、人工衛星を打ち上げ、動物を乗せることに成功し、有人衛星の地球周回軌道からの帰還の技術も確立してくる時期であった。原子力も軍事利用だけでなく、発電などの「平和利用」の研究・実用化も次第に現実的になってきた頃である。
 こうした科学技術の急激な発展が背景にあり、世界の状況や考え方も著しく変化する中、学校で習ったことはすぐに古くなり、学校教育の知識だけではその後の人生を過ごしてくのが困難となってしまう。そこから、教育の機会は学校を出た後にも用意されなければいけなくなるという理念が生まれた。
 日本では東京タワーが建てられ、カラーテレビが普及し、東京オリンピックに合わせて新幹線が開通、高速道路が整備されるなど科学技術の発展と民主主義の理念の確立など社会に大きな変化が見られた時代である。
 経済的に好調であった日本は、ドルショックやオイルショックも乗り切り、経済的安定を背景として人々の学習意欲もますます多様化、高度化していく中、1971年の社会教育審議会答申「急激な社会構造の変化に対処する社会教育のあり方について」が出され、そこから「生涯教育」という概念が用いられ広がった。
 そうして教育や学習機会が豊かになり、それにつれて大学進学率も高まっていった。
 ところが、学歴によって評価するという学歴社会となり、受験戦争が激化し、校内暴力の低年齢化、家庭内暴力やいじめ・登校拒否などが社会問題化した。
 そんな中1986年臨時教育審議会の「個性重視の原則」の中で、学歴社会の弊害を是正し、それまで国が進めてきた生涯教育とは異なる、学習者個人の「生涯学習」に着目した教育改革がはじまる。ここから「生涯教育」という用語に代わり「生涯学習」という用語が広く使われるようになった。

 

2、リカレント教育の思想の社会的背景について
 リカレント教育という用語は、1969年5月に、ベルサイユで開かれた第6回ヨーロッパ文部大臣会議において、スウェーデンの文部大臣であったパルメ氏がスピーチの中で使ったのが最初と言われている。(注1)
 その後、OECD(経済協力開発機構)に注目され、1973年に「リカレント教育-生涯学習のための戦略-」という報告書が出された。そこでは、教育と労働との関係が強く意識されている。
 「リカレント」には「回帰」「循環」という意味があり、「リカレント教育」とは、「教育を受ける期間が終わると、労働の期間になるという人生のモデル」ではなく、「教育の期間と労働の期間が繰り返される人生のモデル」を示したものである。
 日本では1992年に生涯学習審議会が発表した「今後の社会の動向に対応した生涯学習の振興方策について」(注2)の中で取り組むべき課題のひとつにリカレント教育の推進が挙げられている。
 その内容からは、男女共同参画型社会を目指す、高齢化社会の進展に伴う女性や中高年齢者の再就職や社会参加、国際化への対応がうかがえる。

 

3、おわりに
 ラングランの生涯教育的思想、リカレント教育の思想はどちらも社会の急激な変化の中から生まれた発想である。
 しかし、両者の大きな違いは、ラングランの生涯教育的思想は、先進国から経済的社会的抑圧を受けている第三世界の人々がその抑圧からの開放のために、というような文化的人権という領域への関心が強いものであることに対して、リカレント教育の思想という発想は経済発展というきわめて実利的な関心からの発想であるところだ。
 また、リカレント教育は、労働の現場を離れた学校で効率的な教育が行われるという内容であるが、そのためには有給教育休暇というような制度的裏付けや、学習した後、元の職場に戻ったり転職が可能であるというような流動的な労働市場・社会環境が整うことも求められる。
 先進国となって久しい日本でもリカレント教育が大きく推進の方向にあるようだ。「経済財政運営の改革と基本方針2018」として、その中には「より長いスパンで個々の人生の再設計が可能となる社会を実現するため、何歳になっても学び直し、職場復帰、転職が可能となるリカレント教育を抜本的に拡充する。」(注3)とあり、少子高齢化の克服という課題、人生100年時代、情報社会という現代の社会に沿った内容となっている。


文字数2068文字

 

参考文献
注1 文部科学省『生涯学習の現状と課題』(http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/hpad198801/hpad198801_2_013.html)第Ⅰ部 第1章 第3節 1、OECDのリカレント教育 引用

注2 生涯学習審議会(文部科学省HP)『「今後の社会の動向に対応した生涯学習の振興方策について(答申)」の送付について』(http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/t19920803001/t19920803001.html)

注3 文部科学省専門教育課『リカレント教育の拡充に向けて』(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/043/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2018/08/03/1407795_2.pdf)p22引用